走る12月

今日
石内都さんと上野千鶴子さんの対談を聴きに、目黒区美術館へ行く。ふたりは石内さんの「ひろしま」の、ワンピースやブラウスの、かわいい、大きな写真6点の前で喋る。石内さんはお母さまがつくったという、濃い紫のうえに大振りなグレーの蓮のような花がぽんぽんとついた、銘仙の生地で出来たカットソーを着ている。上野さんは真っ赤なマフラーを巻いて、髪の毛はオレンジに染めている。還暦の赤だそうだ。
目黒区美術館はとてもいいところ(川が流れ、川沿いに歩道があり、公園があり、プールがあり、こどものための建物がある場所)にあり、夜のなかにプールの水面がくろぐろと光っている。
数人で揚州商人、黒酢ラーメン。その後、目黒のジョナサンでビールやらお茶やらじゃがいもやらジュースやら。
photoは光りのこと。
今日はトークを聴いただけで、まだ「ひろしま/ヨコスカ」の写真はきちんとみていない。質疑応答で「ひろしま」はひらがなですね、ととてもいい質問をした人がいた。これは石内さんが、かいてみて決めたのだそうだ。「ひろしま」という字は一筆の字が三つはいっていて、とてもやさしいいい字だ、と言った方があるそうだ。

土曜日
M上さんと、新橋に近いほうの銀座で「傘日和」展、それから喫茶ウエスト、それからHOUSE OF SHISEIDOのショーウィンドウとロオジエを横目に通過して初めての月光荘、それからぐっと京橋寄りに移動して、銀座アンティークモール2F物色。きゃ、たのしい。お着物を着た女子率の高さ、そしてその参考になる率の高さに驚く。ウエストではお歳暮といってクッキーの袋をいただく。月光荘ではスケッチブック(ウス)、8B鉛筆、芯だけ鉛筆、けしごむ、白地にマス目のレターセット購入。
M上さんと銀座でばいばいして、新宿。紀伊国屋の前で愉快な3人と待ちあわせて、花園神社、初めての酉の市。ちゃんと列に並んで芸能の神様にお参りする。りんご飴といちご飴を売るおじさんの背後でビールとモツ煮、おでん、いか焼き。おじさんが飴をつくる様子をどうしても見てしまう。振り向いたおじさんと目があってしまう。屋台でしゃーぴんという餃子のひらべったいの、チャプチェ、うずらの玉子まで入ったたこ焼き、4人でわけわけして食べる。トップスで夜コーヒー。
夜も更けて、渋谷ROOTS。Sタロウさんの誕生日。カレーが大好きなSタロウさんは黄色いターバンを巻いてDJしている。わたしは新宿駅でとっさに買ったカレー色の(ただのオレンジとも言う)ばらをあげる。いちご飴のまわりについていたシロップはいつのまにか融けてしまう。
koaraに移動して、光のDJ、よあけまで。この晩の、光のDJのことを、かきたくてかきたくてかきたかった。すっごくよかった。都会であり、サバンナであり、交差点の早回しの映像であり、サーカスであり、遠くであり、ピアノであり、 "there's nothing like music" であり、…そしていつでも、きちんと、やさしく、風がずっと吹いている。ブースの中にいるDJ光の身体はとてもむくちで、ほとんど揺れない、顔も見えない、踊る人々に向かって呼びかけたりしない。青い部屋でキャバレッタさんのダンスを見たときに思ったように、光の生活をわたしは知らない、そのことが、わたしはほんとに素敵と思った。光のことを光の音楽以外に何にも知らない、それでも、それなのに、それだから、この一晩のkoaraの小さな空間のなかで、その音楽に出あえるということが。