ハクビシン・網戸・秋

昨日さ、昨日さ。
夜八時ごろ、夕飯の買いものに出かけたら、近所のマンションの生垣から、ハクビシンの出てくるのをみた。ハクビシンは道を少し先へいって、それからすぐ右へ折れて、マンションと豪邸のあいだの草の生えた空き地の奥へ消えていった。私には長い尻尾と黒に近い濃い灰色の長い影が見えた。
その同じ夜、網戸をあけてベッドで本を読んでいると、集合住宅の上のほうから小型犬が吠える声がして、きゃん、きゃん、きゃん、きゃん、と、よく吠えるなぁと思って聞くともなく聞いていると、どうもそれは女の人の、清く正しい喘ぎ声なのだった。仕事していたはじーがベランダへ休憩に来てその声に気づいて、「イタリアだったら、しょっちゅうこんな声がするんだろうなぁ」と言って、退散した。喘ぎ声をライブで聞くというのは初めてだった。「アメリ」の冒頭のエピソード(いまこの瞬間にパリで何人が達しているかアメリが妄想するひとり遊び)を思い出したりしながら、ふにふにした気分で、終わるまでその声に耳をつんと立ててしまった。