親知らずんずん

親知らず二本目の抜歯、今度はうえの左。前回よりもっと早く、15分足らずで終わる。抜いた歯をもらってもいいですか、と訊くと、「いいですよ、でもほっとくとものすごい臭くなるよ、とっとくならホルマリンかなんかに浸けとかにゃいかんよ」と脅かされる。わかりました、とだけ言うと、「屋根のうえにでも投げるのかね」とさして興味もなさそうに先生は訊く。もらって帰ったはいいが、わたしもどうするかまだ決めてない。うちはマンションだから屋根はない。思うぞんぶん観察して絵にかいて写真も撮って気が済んだら、たぶんベランダのトウガラシの鉢行きだろう。
でも歯は、とくに自分の歯は、いつも見えないとこにあって、そう簡単に全体像を眺められるものではないし、そのぶん爪とか髪の毛とかとは違うし、大きさ的には小指の先くらいはあるのだし、そう思うともらってこずには、いられないのだった。