お台場のフジテレビ前で湾岸の突風に吹かれ、危うくオズの魔法使いになりかける。昔わたしは冒険ものの実写映画が嫌いだった。実写は何でもこわいと思っていた。オズの魔法使いが竜巻で飛ばされた家につぶされて、壁の下から飛び出た脚がこわかった。ネバー・エンディング・ストーリーも、チキチキバンバンもこわかった。メリー・ポピンズの銀行の取り付け騒ぎのシーンが嫌いだった。取り付け騒ぎが何かなんて当時は知らないけど、しわしわに乾いたじいさんたちが大勢でこどもに詰め寄るのが恐怖だった。じいさんたちは何をあんなに恐ろしい形相で怒っていたのだったか。お国違いだけど、あのじいさんたちのことを考えるとどうしてもアンクル・サムを思い出してしまう。かれらは人間としての義務と権利を公然と主張してこどもに詰め寄る。
フジテレビで打ち合わせがあったので初めてあのオフィスビルに入って、眼下に東京湾を見下ろす、あしもとをすくわれそうな渡り廊下にそはそはし、その渡り廊下の窓沿いにいくつも並ぶテーブルで話し合う人々を見て、こんなところで、外の突風をないことにして、落ちついて打ち合わせをできることが到底信じられない。
コーヒーはとてもまずかった。