ハバナ日記(3)

 2月3日。気持ちのいい朝。民泊にはシャワーがないのでケティの叔母さんの家まで浴びに行って、Nとテラスで涼む。昨日あのミュージシャンが言ってたライブに招待の話、あれほんとかな、うん、あれはマジのやつじゃない?とNと確認しあう。そういえば、あれからアダはどうしたのだろう、Alamarへは帰ってこなかった。
 今日もバスに乗って〈詩の家〉へ。Nとどこで別れたのだったか思いだせない。ケティがミーティングでプレゼンしている間、私はがらんとした食堂で絵本の仕事の原稿にとりかかる。開け放した中庭への扉から、いい風が入ってくる。
 パウラに会えたので、持ってきていた「はっぱのいえさがし」を差し上げる。さっきの食堂でみんなに昼ごはんの配給。胃にもたれる系の、お米と肉のお弁当。食べられるだけ食べる。午後、ケティが親友のディウスメルを紹介してくれた。この人はとても優しく思慮深い人なのだけれど、その優しさと思慮深さが行きすぎて、こちらにすこし圧を感じさせる。彼に悪気はないので、私もがんばった(が、数日後に限界をみることになった)。ついに私のネット禁断症状が現れてきて、3人で旧市街をうろうろして道ばたのお兄ちゃんから1時間分のwifiカードを買って、マレコンで繋いだ。まる2日ぶりのインターネット。たった2日間接続していなかっただけで、なんだかとても頭がすっきり整理されている気がした。
 マレコンの防波堤にあぐらをかいて座ると、脳内に「世界ふれあい街歩き」の音楽が流れた。夕方からは、マレコン通りに面したイスパノアメリカ会館で朗読会。壇上で合奏団が、うっとりするような曲や感傷的な曲を奏でて、その合間に詩人が壇上に呼ばれて朗読する。音楽はどの曲もどの曲も、こういう機会に演奏される音楽としての最高峰の音楽だった。昨日はいなかったオランダやトルコからの詩人も来ている。あらっ、ちょっとあんた、どーしてたの?なんつって、壇上で1日ぶりのアダに再会。ほんとボヘミアンな性格なのだ。昨日よりは元気そうな顔で、しれっと自分の出番をこなしている。私はケティにチェックしてもらった片言のスペイン語であいさつして、「テロリストたち」を読んだ。読みおえると大きな拍手をもらった。誰かがブラボー!と言ってくれたのが聞こえた。終わったあとは会場のテラスでスナックをつまみながら雑談。メキシコから来たミゲルが「Por Favor, Lea La Poesía」と書いた赤いステッカーを大量にくれる。
 ディウスメルとケティと、マレコンから昨日のパスタ屋まで移動して夕飯。ケティ、パスタを注文したまま、ちょっとと言って出かけたまま、私とディウスメルが食べ終わっても帰ってこない。パスタ屋の閉店時間になって、ディウスメルが探しにいくのと入れ違いで戻ってくる。何をしていたのかよくわからない。またマレコンに戻ってみるとまだみんないて、アダもいて、これからみんなでどこかでパーティーをするというので集団についていったけど、どこまで歩いてもどこが会場なのか誰もよくわかっていないみたいだった。疲れてしまったのでもう帰ることにして、中央広場の前で乗り合いタクシーを拾って今夜はディウスメルと3人でAlamarへ。彼の親戚の家が、ケティの叔母さんの家のすぐ裏手にあるのだった。

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