ハバナ日記(1)

 午後遅く、出発。羽田空港の搭乗ゲートで、イヤホンをつけて音楽を耳に流しこみながら、出かける前の最後の仕事、新しい詩集の装幀についてのやりとりを片づける。ふだんそんなに忙しいわけじゃないのに、ジェットセッターみたいに空港で仕事のメールを高速で書いている自分がおもしろい。除菌ウェットティッシュを買った売店になぜか、数ヶ月前に壊れたカシオの腕時計とほとんど同じモデルの時計があって、免税品で六千円くらい。エイッと買ってしまう。ゴールドのレトロなやつ。カシオの腕時計が好きだ。このゴールドのは、アクセサリーをつけているようなうれしさもあるし、時間のことだけに集中して仕事をしてくれるので、まじめな友達といるみたいに安心なので好きだ。トロントまでの飛行機の相席は、団体旅行らしい女子大生(?)ふたり。「オリエント急行殺人事件」と「スリー・ビルボード」と「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」観る。トロントの乗り継ぎはとてもスムーズ。空港の窓から見える景色はいちめんの雪だった。ハバナへの便には日本人観光客がたくさん乗っていた。

 2月1日、夜のハバナに降りたち、アダとケティと再会。女子高生みたいにきゃーきゃー騒ぎながら出迎えてくれるふたりとハグ。タクシーの運ちゃんも来ている。空気はむわっと暖かい。4人で一緒に、空港の外のカフェで小さいコーヒーをくっと一杯、テキーラショットみたいに立ち飲み。1時間くらいドライブして、滞在先のAlamarに到着した頃にはもう真夜中だった。いつも思うけど、旅先で、空港から宿泊先へ向かうときだけに感じる気持ちがある。もう着いてるのにまだ着いてない場所を眺めながら移動する、ふしぎな時間。ハバナなんだ、ここ、まじでハバナなんだ、ときょろきょろしながら驚いて、でもそのときに見ている風景は、あとから考えると全然ハバナじゃない(東京モノレールから見える風景が全然東京じゃないみたいに)。タクシーを降りると、団地だった。暗くてよく見えないけれど、すぐそばで海が海鳴りしていた。ケティの叔母さんが起きてきて、暖かいお茶を出してくれた。泊まる部屋は、叔母さんの家のお隣さんの激安民泊で、アダと相部屋。そのアダは風邪を引いて咳をしている。日本からもってきたトローチと頭痛薬をあげて、シャワーも浴びずに眠った。

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