きょうの風景(7/16)

馬車道での用事のあと、渋谷に戻ってくると、東横線の駅のホームまで、原発反対デモのシュプレヒコールが聞こえてきた。きょう代々木公園で原発反対運動の集会が行われたはずだと思って、私は駅から自宅まで、代々木公園を突っ切って歩いてみることにした。17時すぎで、公園内ステージでの挨拶やライブは全部終わっている時間だった。西武の脇を歩いている辺りで、「原発撤×」というプラカードを首から提げた、厳しい表情の小柄なおじさんとすれ違った。もっと大変な数の集会参加者が、そういう感じで公園通りを駅に向かって降りてくるかと思ったけど、公園通りはほとんど普段の休日の夕方と変わらなかった。やたらと黄色い袋(ドンキのやロフトの)を持っている人が多い気もしたけど、気のせいかもしれない。洋服の大きなショップの前に黒いTシャツの店員の男が出てきて、「皆さん、暑いです! Tシャツが必要になります!いらっしゃいませーいらっしゃいませー」とメガホンで客引きの声をあげていた。
公園にはいつもの祭り屋台が少し多めに出ていた。主催イベント関連と思われる出店の人々は、自分たちをねぎらう拍手をしたり、けりをつけ難そうに世間話をしたりしているところだった。ステージ上はほとんど片付いて、黄色い布に大きくNO NUKESとかかれた垂れ幕だけが、ぐずぐずと残っている。警官がふたり、ステージの前を歩いて行く。ザアッという風がふいて、警官のひとりの帽子が飛ばされたのを、慌てて拾いにいっている。舞っている砂埃がみえる。

公園を横切って原宿から富ヶ谷へ抜ける車道に出ると、いままさにデモ隊が出発するところだった。23区や神奈川の労組連合とか、年金関連の団体とか、「医療」とか「生活」とかかれたノボリを持っている人々だった。デモ隊が車道に出るのを待って、私はかれらの隣を、歩道を歩いていった。デモは富ヶ谷の交番前交差点を右折して、これから新宿まで行くらしい。デモの人々はみんな私のと同じような色の薄い日よけ帽をかぶっている。日傘を差している人もいる。ビニール傘に反対の文字をかいてかかげている人もいる。この隊列に参加しているのは、五〇代とか六〇代の男女がほとんどのように見える。たまに、小学高学年くらいの男子や、二〇代後半らしいカップルが混ざっている。神奈川の隊列の一番前でメガホンのマイクを持ち音頭を取っている人は、髪の毛が全部おさまる黒い帽子をかぶりぴったりしたデニムをはいた、白い肌のきれいな女の人だ。「原発の"虜"か?」という印象的なプラカードを提げている人を、ドイツ人ふうのガッチリした体格の女性が、歩道側から写真に撮っている。児童公園の柵に座ってデモを眺めている人がいる。私も少しその並びに座って眺めた。向こうから子どもを後ろに乗せて走ってきた自転車の女の人が、デモの声に合わせて「さいかどー、はんたい、」とうたうように言う声が私の耳に届いた。
帰ってきて、シャワーを浴びて、ベランダのゴーヤを眺めた。