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きょうの風景(5/27)

自宅から代々木上原駅まで行く路の途中に細い私道ふうの急な下り坂があって、急な下り坂の急な下りぎわ、T字路を左に曲がる角に、家一軒ぶんの空き地がある。そこが空き地になってから、春も夏も秋も、茎が強くて葉もかたそうな、切ったら白い血がじゅっと出そうな野の草が大小問わずごびごび生えて、埋め尽くして、一度刈られたくらいでは屁でもないのだった。それで私はこの空き地が気にいっていた。きょう、坂を下りていってみると、私の左半身が受けとる感じがばかにひっそりして、目をあげてみたら、そこは一面の、紺碧なのだった。紺碧の、あの、青春映画のなかで夕陽に照り映える海のような、光をきらきら弾く、塗りたての、アスファルトなのだった。その海を、しいてひとつあげるとするなら、『緑の光線』の海なのだった。私は、あんなに図太く繁茂している緑が一掃されるときにはさぞ寂しい気がするだろうと決めてかかっていたので、アスファルトが紺碧の青春映画の海でもあるなんて、やるじゃんか、と思ったのだった。