やさしくてかわいい

ルイ・マルの「好奇心」という映画をみた。映画の助監督をしていた友達に薦めてもらってあったのだ。彼女と、何回か一緒に映画館へ映画を観にいった。一緒に観た映画より、映画の前後にした数十倍の数の映画の話のほうがおもしろかったし、薦められて後で観た映画(「ロスト・イン・ラマンチャ」とか)のほうが断然面白かった(一緒に観たやつで、ふたりとも感動して映画館を出たのは「フローズン・リバー」だった)。
「好奇心」はほんとうにさっぱりした清涼飲料水のような映画で、15歳の男子の飲酒だの喫煙だの筆おろしだの、鬱屈した学校生活だのの話なのになんで?と思う。見終わったあと、わたしはニコニコしていたし、スカッとしていた。最後のほうで、主人公の少年がお母さんとセックスするシーンがあるのだけど、それは「近親相姦」という言葉で思いだされるどんな陰気さとも違って、やさしくてかわいかった。パルチザン闘争から逃れてフランスのぼんぼんと結婚して子どもを三人産んだあとも不倫するしモテるイタリア人のお母さんはゼーンゼン「お母さん」ではなくてかわいい女で、少年はジャズばっかり聞いてるインテリの男。いつのまにか、というより思い返してみれば最初から、「母」も「息子」もかるがると超越しているのだった。すごいです。