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捨てたよ

大掃除。買いものするたびにジリスのように台所のテーブル下に溜め込んでいた紙袋をたくさん捨てた。去年や一昨年の忘年会で誰かが持ってきた酒瓶の入っていた縦長の袋をいくつも捨てた。何年も着ていない黒いカーディガンと黒いカットソー(いまより10キロ肥っていた頃、鎖骨がきれいに見えるのが気にいってしょっちゅう着てたやつ)を捨てた。流しの下の引き出しに敷いていた抗菌シートを捨てて新しいシートを敷いた。古くなったお茶っ葉を捨てた。フライパンを捨てた。薄い段ボール紙が2枚貼り合わさったアマゾンの封筒を破って捨てた。陶器壺の中に放置してあった使用済みの生理用品を捨てた。クイックルワイパーのふわふわキャッチャーハンディタイプを3つ使って捨てた(とても良い商品です)。ベランダを掃いて土埃や抜け毛を捨てた。汚れたYonda?のストラップを捨てた。縁が割れて欠けて密封できなくなった密封容器を捨てた。まだ密封できる密封容器もひとつ捨てた。生きてきて、ようやくわかってきたことは、使うかもしれないと思って取っておいて後でほんとうに使うのは、新聞紙と小瓶と段ボール箱とプチプチのみなんだということだ。あと、要らなくなった何かを誰かにあげたいと思ったとき、その誰かがその瞬間に明確に思い浮かばなければ、わたしはその何かは捨ててしまうことにした。

「太陽と大地と生物とを愛し、富を軽蔑し、乞う者には与え、白人文明を以て一の大なる偏見と見倣し、教育なき・力溢るる人々と共に闊歩し、明るい風と光との中で、労働に汗ばんだ皮膚の下に血液の循環を快く感じ、人に嗤われまいとの懸念を忘れて、真に思う事のみを言い、真に欲する事のみを行う。」之が彼の新しい生活であった。
中島敦「光と風と夢」より