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「独楽吟」橘曙覧 (抄)

たのしみは草のいほりの筵(むしろ)敷 ひとりこころを静めをるとき
たのしみは珍らしき書(ふみ)人に借り 始め一ひらひろげたる時
たのしみは朝おきいでて昨日まで無かりし花の咲ける見る時
たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつづけて煙草すふとき
たのしみは常に見なれぬ鳥の来て軒遠からぬ樹に鳴きしとき
たのしみは物識人に稀にあひて いにしへ今を語りあふとき
たのしみはそぞろ読みゆく書(ふみ)の中に我とひとしき人を見し時
たのしみは銭なくなりてわびをるに人の来りて銭くれし時
たのしみはとぼしきままに人集め酒飲め物を食へといふ時
たのしみはふすまかづきて物がたりいひをるうちに寝入りたるとき
朝日新聞社刊「宗武・曙覧歌集」)