高尾山の記録

1月3日、月曜日。はじーとやまもっちとえりかちゃんと四人で、高尾山に登った。冬の高尾山に、初めて登った。登山口で、わたしは「リフトに乗りたい」「だんごが食べたい」と主張した。やまもっちが券売所へどんどん歩いていってリフトの切符を四枚買った。リフトを待つ列に並んでいるとき、お腹の黄色い小鳥が列のそばを歩いているのを見た。後から、キセキレイだとわかった。
足のぶらぶらするリフトが好きだ。すれ違うリフトに乗って降りてくる人たちの顔が見えるところも好きだ。何か考えごとをしているみたいにぼんやり前方を見つめているおじいさん、危なっかしく斜めに座ってふざけている小学生の男の子たち、きっと霊気の宿ったとされる何か入りの紙袋を抱えたお姉さん。
リフトを降りてからは、一、二度ベンチに座ってお茶を飲んでチョコレートを食べただけで、ほとんど立ちどまらずに、山頂まで行った。一号路は、初詣の人たちで混雑していて、薬王院がいちばん混雑。参道の両脇で、破魔矢やお守りや食べものをわんさと売っている。このような諸々の誘惑に負けずに詣でるのだぞ、と誰かに言われているような気がしてくる。本堂の裏へ抜けると、桃色や黄緑の袴をつけてきれいに結い髪した子どもが走りまわっていて、わたしは「あれで登ってきたのかな」と誰にともなく言ってしまう。

頂上の茶店で、おでん、月見そば、とろろそば、山菜うどん、分け合って食べる。ちょっと顔をあげると、調理場の手前の壁に、ちい散歩のサインが飾ってあった。
見晴らし台の近くで、父親らしき男性に「もうピースする歳でもないだろ」と言われながら写真を撮られている男がいる。レッグウォーマーをはき紫のダウンを着て杖をついて、かっちりした山の装備で陽を浴びている母子がいる。茶店の前に、赤や緑や黄色のチップスターが、積み上げられ陽にさらされて売られている。空気は乾いてつめたい。茶店の引き戸のところには、安倍首相が来たときの写真が貼ってある。

帰りは六号路でくだった。明るい尾根づたいの道をしばらく行って、そこからひんやりした沢をくだって行く。三頭山でくだったブナの路に、よく似ていると思った。ミソサザイがとても近くで鳴いていた。わたしが持ってきたBIRD ECHOで鳥の声を出すと、ミソサザイが応えてくれているような気がする。このおもちゃはほんとうによく出来ていて感心してしまう、木材に彫られた穴に鉄のネジを入れてくるくる出し入れすると、その摩擦音が鳥の声そっくりに聞こえるのだ。去年の秋のジンピクニックで買ったものだ。
ひとけの少ない道を、行きにくらべて随分長く歩いた。