オーブン来訪
数週間前、うちにオーブンがやってきた。イタリアのメーカー「デロンギ」の、コンベクションオーブンという製品。日本のごてごてといろんな機能のついた、「あ、もう料理はこっちでやりますからー」みたいなオーブンレンジと違って、まるいツマミが3つついただけの、銀光りする、「お前、やることやっとけよ」という目の、シンプルな四角い箱。かっこいいんだこれが。
うちには2年前まで電子レンジとトースターがあった。わたしは料理は(嫌いなわけではないけど)ほとんどしない。かといって電子レンジをがんがん使ってコンビニ弁当を食べるなどということもない。はじーが何年も昔に誰かからもらって使い続けていた電子レンジが壊れてからは、トースターだけが残り、はじーのちょっと尋常ではない料理好きのおかげで、電子レンジを使わない生活が続いていた。今度デロンギの兄さんがやってきたので、トースターにも場所をあけてもらうことになった。これもはじーが昔から使っていた、なぜか台の傾斜している、食パンが2枚はいるだけのトースターだった。洋食の時はいつも、お世話になった。
兄さんの登場で、グラタン製作をまちこがれていたはじーのグラタン熱に一気に火がつき、とたんにうちの料理はグラタン祭りになった。最初にタラモのグラタンが出来た。西荻の喫茶店「それいゆ」のとそっくりな焼きチーズカレーが出来た。
すぐ、週末にグラタン・パーティーを決行した。みかみっちとなこしが来てくれて、個展の終わった直後の聖子さんもツジさんを連れて来てくれて、みんなで温野菜のマリネを前菜に、塩だらのグラタン、塩鶏とゆで卵のグラタン、焼きチーズカレー(本番)と、ビールワイン片手に、やいのやいの、満腹になりきってしまうまで食べた。はじーが「かいじゅうたちのいるところ」の原書と日本語版を並べてなこしに翻訳の話をしはじめて、わたしも「That very night」のveryっていうのはー、なんていいはじめて、それからあっと思いだして、和田誠さんの「倫敦巴里」をひっぱりだしてきた。川端康成の「雪国」をいろんな作家の文体でパロディしたり、童話の「兎と亀」をいろんな映画監督のシナリオでパロディしたり、している、ものすごく馬鹿でくだらなくて、そのくせものすごく知的で、ものすごくおもしろい本。パロディだってここまでやられれば、ちゃんと翻訳のはなしになる(和田誠さんは意図的にこれをパロディとは呼ばず、「モジり」という。その理由もちゃんと本の最後にかいてある)。大好きだ。「にほんご」や「ぎおんごぎたいごじしょ」も出してきて、おいしいものばかり、言葉のはなしばかり、びっくりするほど、愉しかった。
そのあとしばらくして、その夜酔っぱらったみかみっちが帰ってから思わぬ大胆な行動に出た話や、なこしが翻訳についてブログで考えているのをみて、またもう一度、愉しくなった。わたしは昨日の夜中、なこしと行った西荻で買った「がちまい家のオーガニックな焼き菓子」のレシピで、紅茶のサブレをつくった。きっとまだ、いつまでも興奮してるのだ。
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