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三頭山の記録(4)

朝、目が醒めて、カーテンをあけると晴天だった。11月の晴天だった。窓を開けると、風が音のするほど強く吹いて、落葉が斑点模様のように、山なみの景色のなかに舞った。窓の下に、昨日おおご馳走を食べた別館の兜屋根が見えた。すぐ、朝食のアナウンスがあった。
別館のお座敷の、昨晩と同じ席に座ったところで、部屋にカメラを忘れたことに気がついた。部屋へとってかえして、畳の上のカメラを拾って、なんとなし、もう一度斑点の舞っている景色をみた。窓を開けて、そのカメラで、しばらく動画を撮った。
朝食もご馳走だった。隣の席にも昨晩と同じ夫婦が座って、お酒を頼むかどうか迷って、結局ビールを注文した。迷っているあいだ、もともと少し下ったところにある数馬の湯に行く予定だったのを、奥さんが、こんなに晴れたので都民の森へ行ってみない、と旦那さんに提案して、それならお酒はやめとこうというような相談をしばらくしていたけれど、やっぱりお酒を飲んでお湯に浸かることにしたらしい。わたしは昨日みた都民の森のさまざまの景色を思い出して、温泉なんかよりずっといいですよ、まだ行ってないなら都民の森へぜひ行ってみたほうがいいですよ、と言いたくてしかたなく、やっとのことでこらえた。
朝食のお座敷の隣に、使っていない和室があったのではじーと覗いてみると、皇族のひとびとの写真が何枚も飾ってあった。本館のロビーには、この山荘のことが載った新聞記事や写真が貼ってあり、おおきな蜂の巣やキジの剥製がガラスケースに入っている。本館のロビーの奥にも使っていない部屋(宴会場?)があって、そこには仁王立ちのツキノワグマや、アナグマの剥製があった。わたしはまた写真を撮った。
この日のために買ったkeenの山靴を履いて、いきようようと出立した。前から脇から、風がからだにあたってくる。斑点があたってくる。秋川渓谷の水音がする。橋を渡って滝を過ぎ、せせらぎを下にみて、数馬バス停まで下った。日なたのなかに、わさわさと子どもがいる。カブスカウトの男子たちだ。