見ること、重ねること

日曜日、「皇室の秘宝展」、上野の国立博物館へ、ひとりで。わたしはひとりで美術館に行くのが好きだ(先日ひーちゃんに言われて再確認した)。国博は混雑ぎみ。来ている人はほとんどみな、ぜんぶの絵をひとつひとつ、平等にみようとして、列を作って、そろそろと横に移動しながら、スライドショーのようにみている。わたしは混んでる列がたいへん嫌いなので、どうしても気になる絵だけ、隙間に割りこんで、立ちどまって、列の邪魔になって、見た。若冲の、海の動物たち。それは、大プリニウスの「博物誌」を思い出させる、精密さと、荒唐無稽さのぐじゃ混ぜ。応挙の、朝日に目をひんむいている虎。この虎の前に立ったら、わたしはひとりでにッかにかしてしまった。よ!と声かけたくなる、ネコ科だよね虎は、と思わせられる、この大きさじゃなきゃダメなのよねと思わせられる、虎であった。

月曜・祝日、棚から落ちてきたチケットで、ニューヨークシティバレエを観に、渋谷へ、あんぬと。幕が上がると、うすぐらい蒼い舞台に、とてもかわいい、林があった。林を構成する木はどれも同じ方角を向いていて、どの木も右手をぴったりと同じ方角へ挙げていて、その右手のぴったりと指を揃えたてのひらに、白い光が落ちていた。楽曲は、チャイコフスキーの、セレナーデ。オーケストラの演奏、淡々としてとてもいい曲になっていた。バランシン振付の作品が3つ続いたあと、最後にウェストサイドストーリーをほぼミュージカルそのままにやる、という変な演目構成で、わたしもあんぬも最後にどぎつい色の衣装とセットで目が埋めつくされたことに、なんだか言葉がみつからず、納得がいかず、セレナーデだけもう一度見たいね、とばかり、話し合ってしまった。