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パリの夕餉と鶴見さんの夜

発情期である。新宿での用事が終わって夕ぐれの帰り道をつてつて歩いていると、茶色と黒の汚く混ざった痩せた猫がびっこをひきひき、わたしを追いこしていった。
夜、ショートパスタのジェノベーゼ、ブリのソテー、ごま入り黒パン、みじん切りのきゅうりと玉ねぎとプチトマトをチコリに載せたの。お花見でもらった白ワイン。食べながら、わたしは「こんなの日本じゃない! こんなのパリだ!」とさけぶ。鶴見俊輔さんのインタビュー番組をみる。鶴見さんの生きていた戦争、あめりか、にほん。その戦争、あめりか、にほんのなかで鶴見さんのしていた勉強、それから仕事。あまりにもひとつひとつはっきりと、いま見ていることを写すように、鶴見さんは喋る。わたしはときどき鶴見さんの口からひゅっと出る英単語を確認し、確認し、たとえばMistaken Objectivity, と口のなかで言ってみる。