シクラメンの変貌

ひる、S・Hと西荻で喋る会。読書会にもするつもりだったのが、一時半に西荻に着いてから六時に別れるまで、ずっと喋ってしまった。移転後のクワランカを地図で探し探し行ってお昼ごはんとし、それからバス通り沿いの公園の桜のもうほとんど散りきった、さいごの花ひらがシジミチョウみたいにくるくる風にのるのを、しばらく、公園には入らないで、佇ってながめた。Sも、ながめた。文房具屋だの古道具屋だのに寄り道して、西荻に住んでいたころには知らなかった小さな喫茶店「マンモス」で、Sはコーヒーフロート、私はティーフロートを飲みながら(どちらも大きなバニラアイスがすっくと載っている)、おおまかにいえば、ことばについて、喋っていたら、あっというまに日が暮れてくる。けとう、毛唐という言葉を私は初めて知る。
よなか、はじーとゴミ袋を買いにコンビニへ散歩がてらゆくと、みかけない雄猫がこちらにお尻まるだしであの交差点の桜の下にいるのを見た。はじーが威嚇猫声をだして近づいてゆくと、猫は一度振り向いたなりぴゃーっと駆け出し、はじーもそのあとをぴゃーっと数百メートル追いかけるのを私はあきれて見ていた。白色の音のシクラメンの窓の前をまた通った。きょうは音楽の流れてない、暗い窓をもういちど覘いてみたら、嘘、それはシクラメンなんかではなくてぜんぶコチョウランの鉢なのだった。