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とべバッタ

センター街のブックオフの絵本コーナーで味をしめて、実家の近所のブックオフにも絵本を漁りに行ってみたら、「とべバッタ」をみつけた。バッタはとぶ。「跳ぶ」だけではなくて、「飛ぶ」のである。バッタは、一生を天敵から逃れ隠れて生きていかなければならない自分自身に絶望して、ある日、岩のうえに立ち、そして、とぶ。天敵をけちらし、とんぼや蝶に嘲笑われても、れっきとした一匹のバッタとして、バッタのとびかたで、どこまでも、とんでゆく。

とべバッタ (田島征三)

とべバッタ (田島征三)

きょう、よるは4の会のため、千歳烏山へ。4の会は、ベケットの「QUAD」という作品をやってみるために女子5人で結成した会だ(ひとりは見学兼記録)。「QUAD」は正方形の四辺と対角線のうえを一定の規則に則って4人の演者が歩くだけの作品。でもやってみると、速度や姿勢、足の運びかた、対角線を何歩にするかなどの数えきれない問題があり、そのひとつひとつを解決していくのがたのしい。ひとつひとつの解決がそのまま、このテキストの解釈になる。きょう集まれたのは3人だったけれど、きょうもたくさんの発見があった。わたしが今日まで気がつかなかったのは、ソロで歩くときにもE点(中心点)は避けられるべきものであること。4人がひとりずつ歩きに加わる順番は反時計回りになっていること(ひとりずつ出ていくときも)。
 実際にあるく前に、きょうはリツゼンという名前の稽古をした。両腕を二本ぶらんと前に出し、ひざをちょっとまげてらくに立った状態で15分静止する。立っているあいだはできるだけ視界を狭めず、無心になる。それから前回もやった、能の方法でできるだけゆっくり一歩を踏み出す稽古。これの、自分の重心が移動していく感じをあじわうのがなんとも気持ちいい。こんな速度で歩いたり、寝るとき以外でこんなに長い時間不動の姿勢になることは、とても貴重で、自分の輪郭がすこしだけ時間の流れからはずれて、透明になるような感覚がある。岩のうえでじっととぶ瞬間をみきわめていたバッタの気分に、すこしだけ近づいただろうか。