カムイとシオン
母の母の家では犬を飼っていた。ぴゅーぴゅー走ってばかりいる犬で、名前はシオンという。シオンはひとつのところに3秒はじっとしていない。自分の名前はわかっていて、「シオン!」と呼ぶと誰でも構わずに近寄ってくる。賢いんだかばかなんだかわからない。落ち着かない動物は見栄えがわるい。名前なんか呼んだってフンとしていてほしい。ふだんジッと動かないで、いざというときにだけ全神経を集中させてぱーっと走ったりする姿をみるのこそ、動物の迫力がある。
いま「カムイ伝」と「カムイ伝講義」を併せて読んでいて、「カムイ伝」には野生動物の生死をかけた姿がたくさんでてくるので、おもしろい(第三巻ではアナグマがオオカミにやられていた……。でも必死で逃げるアナグマがピョーンと跳んだりしている絵をみると心が躍る)。カムイは動物たちとちっとも変わらない。人間でも百姓たちは田植えや麦刈りの時には命をかけて集中して仕事をする。武士たちはいばり散らしているけどその実質がなにもないので、前後もよくわからずに走ってばかりいるシオンと同じだ。
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