夢の部屋

夢で。
いま住んでいるのと同じマンションの別棟に引っ越すことになる。別棟のほうがいい部屋が入っているらしい。もう借りたことになっている部屋を、私はまだ見たことがない。新しい部屋は202号室で、キャビネットみたいなガラス扉を開いて入ると、とても広い正方形の白いギャラリーみたいなワンルーム。天井が高くて、部屋の奥の壁は一面本棚で、まんなかに明るい緑の葉っぱをつけた広葉樹がどーんと立っている。玄関の近くに仕事用のデスクがあって、そのデスクもなんだか有機的なフォルムで、机の板の右端に丸い穴があいていて、そこから細い樹木が伸びている。広いバルコニーがあって、誰かがひとりがけのソファを丸干ししている。部屋は全体的に服やモノですごく散らかっていて、全部、前に住んでいた人のものらしい。私たちが片付けなければならないらしい。夢の中で私は(だから、安く借りられたのか、この部屋を)と思っている。台所が見当たらないので、はじーが心配している。あったと思ったら、部屋の隅のほうに洗面所みたいな水場が一個だけ。その奥の暗がりにひどく使いづらそうな調理台とガスコンロがあって、その上にも、どぅわーと服が、いっぱいに積まれている。なんだろうこれは、広い部屋、嬉しいのだけどな、高い天井、部屋のなかの植物、嬉しいのだけどな。どこまでも散らかるモノと服と、悲しい台所に、果てしない気持ちになる。

現実には別棟なんてない。わがやは古いマンションの賃貸で、坂に寄りかかるみたいにして建っていて、二階なのにちょっとだけ庭とベランダがある。毎日、すずめが来る。春菊みたいな夏草が茂っているのを物干し台のスペースだけ草刈りしたら、黒い蟻のような蚊に足の甲が水玉模様になるくらい刺された。二月にもらった胡蝶蘭に、新しい蕾がついて、今朝咲いた。