きょうの風景(4/5)

白いシュワシュワした花がこんもりと咲いている木が目の先にみえて、りんごの木だろうかと思ってよく見たら、ウォーターフロントの白い桜の並木なのだった。光の反射が眩しいせいか、気がかりなことがあるせいか、景色のトーンが明るい方に飛びすぎてよく見えないまま、浮かんでいるような気持ちで歩いた。芝生では寝転んでいるおじさんの胸のうえでダックスフントが日向ぼっこしたりしていて、まるでスーラの絵みたいだった。

あんなちゃんと私はガラーンとしたほとんど開店休業みたいなジャイカのカフェでコーヒーを飲んでアイスもなかを食べながら、こんどの夏の計画をした。あんなちゃんは派手なピンクのキラキラした太い化繊でなみなみと編んだチープなバッグを持っていてそれがとてもかわいかった。あんなちゃんはいつも、そういうふうにかわいい。ガラスの向こうではとんびやかもめが飛んでいて、ぽつぽつ並んだ植木にはスズメが来ていた。

それからもうすぐ撤収してしまうというハンマーヘッドスタジオに行った。アートを浴びながら、アートの見方を忘れている感じがして、でもこれまでもアートの見方を知ってたことなんて一度もないような気がした。ひとつひとつの作品がぐっと心に入ってくるわけではないのに(だからか)、妙に居心地がよかった。